◆1998年8月第4週のぶりてんコラム◆




8月25日号 NO.178
『たわごとコラム』
こんな噂を今日耳にした。
現在、アジアは泥沼の大不況に襲われている。日本もダメ、韓国もダメ、タ イもダメ、インドネシアもダメ、フィリピンなんか話にならんという状況で ある。かすかに中国に勢いがあるぐらいだ。
この大不況は、当然ここアメリカにも影響する。一番いい例が、それらの国 からやってきている留学生たちだ。
留学生は、基本的には働けないため、生活費は母国からの仕送りに頼るのが 普通である。ところが、その母国の通貨の価値がずっこんばっこん落ちてる もんだから困ったものなのである。韓国などは、いきなりウォンの価値が半 分になったため、多くの留学生たちが韓国に帰らざるをえなかった。
「まー、大変よね」と日本人もヒトゴトのように言ってる場合ではない。明 日は我が身なのである。
でもね、ここからがこの国アメリカのスゴイところで、今日聞いた噂による と、アメリカ政府は、アジア系留学生のみを対象に臨時の労働許可書を出す らしいのである。
まだ確認を取ってないので、「労働許可書を出す」とは断言できないが、正 直言ってこの国ならやりかねない。
「げー! オレも欲しい!」という日本人留学生の皆さん、今すぐインター ナショナル・ステゥーダント・アドバイザーのところに行って、その情報が ホントかウソか確認してちょうだい。
もしホントなら、まわりの日本人留学生にも教えてあげてほしい。ついでに 私にもね。
もしウソなら・・・・ごめんなさい。でも、そんなウソ誰が考えるのだろ う。
その噂がウソじゃありませんように・・・
                        ひろ



8月24日号 NO.177
『NYウエイター物語』〜寿司政の人々4〜
4時58分に店内の明かりがつくと、テーブルの影からいくつもの上半身が ムクリムクリと起き上がった。
階段を数人の人間が駆け上がってくる音が聞こえる。
ざわざわと人の気配が店内に充満する。
私は、何をしていいのか、どこにいたらいいのかがわからず、でも座ってる のも何だからと、カウンターのところに立っていた。
白衣姿の日本人とヒスパニックらしき男たちが私の横をすりぬけていく。
一応、私は、日本人には「こんにちは」と挨拶したのだが、ひとりだけが 「うぃっス」と応えただけだった。小さな男だった。
ヒスパニックの男たちには笑いかけた。すると、ほぼ全員が笑い返してくれ た。
ふと左手の座敷のほうを見ると、奥から権藤さんが歩いてくるところだっ た。その手前には、私と同じカッコをした人間たちが数人立っていた。
権藤さんは、私を見つけると言った。
「ちょ、ちょっと竹中くん、いいかな。こっち来てよ。じゃあ、みんな集 まってー。しゅうごー」
権藤さんが立ってる位置は、ちょうどカウンターと座敷の中間ぐらいだっ た。そこは、小さなステーションになってて、計算機やホッチキスなどがい くつか置いてあった。
「ここ、ここ、ここに来てくれる。みんな集まったかな。1、2、3、4、 5・・・、もうひとり足りないけど・・・」
「ヨシが遅れてます」
目の前の5人の真ん中にいる、中年のほっそりした男性が言った。
「またかよ、ったく。メグロさん、ちょっと言っててよ」
「この前も言ったばっかりなんですけどね」
そのメグロという中年のオヤジが、少し呆れたようにそう言った。
正確には、私と同じカッコをした人間は4人だった。
向かって左端のおばさん、ひとり飛ばしてメグロ氏、その横の一見若めの女 性、そして私と同じくらいの年の男性。左から2番目の背の小さな女の子は 着物を着ていた。
誰かが階段を駆け上がってくる。
「来たかな」
権藤さんが、座敷の奥の階段の下り口を見ながら言った。
そこからひとりの若い男性が飛び出してきた。
「ゲッ!」
「ゲッじゃないの。早く来いよ」
「スイマセーン!」
「これでみんな揃ったかな。じゃあ・・・」
私は、手のひらの汗をそっとズボンで拭いた。                      ひろ
               

「ぶりてんNuts」編集部


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