◆1998年7月第4週のぶりてんコラム◆




7月25日号 NO.168
『NYウエイター物語』〜寿司政の人々3〜
「とりあえずここが更衣室だからさ。空いてるロッカー使っていいからね」
そう言いながら、権藤さんがひとつのロッカーを開けると、中から何かの雑 誌が数冊こぼれ落ちてきた。
「あららら。こんなもん入れとくからなあ。ったく」
権藤さんは面倒くさそうにそれらの雑誌を拾い始めた。私も慌てて拾い始め る。
それはすべて日本のゴルフ雑誌だった。
でも、私は何も言わずにその雑誌を権藤さんに手渡した。
「あ、ありがとね。で、これをどうするかというと・・・」
権藤さんは、ロッカ−の中にそれらの雑誌を再び押し込もうとしていた。
ふと、そのロッカーの中の棚を見ると、真っ白な帽子がちょこんと置いて あった。帽子の正面の部分には、サメの刺繍がしてあった。
なんとかその雑誌たちをロッカーの中に押し込み返した後、権藤さんがボソ リと言った。
「このロッカーの持ち主、ハナちゃんっていうんだけどんさあ、これがゴル フ大好きでね、ほら、見てよ」
彼は、ハンガーにかかってる洋服を押し退けて、そのロッカーの一番奥の部 分を私に見せてくれた。
そこには、ゴルフクラブと思われる銀色の棒たちが数本静かに並んでいた。
「稼いだ金、みーんなゴルフに使ってるみたいなんだよねえ。まあ、ここま でやりゃ、大したもんけどね」
ロッカーの中にかかっている服たちも、ゴルファーらしく、なかなかメリハ リのある色使いを見せていた。
ガシャン。
そのハナちゃんのロッカーを閉めると、権藤さんは再び空きロッカーを探し 始めた。
ガシャン。
「これもダメ」
ガシャン。
ガシャン。
「これもか・・・」
ガシャン。
と、権藤さんがそのロッカーの扉を閉めた時、私たちの横手から声がかかっ た。
「ヘイ!」
ふたりして振り向くと、ヒップポップ・チャイニーズのボブちゃんが、相変 わらずソファーに深々と座りながら、ある方向を指差していた。
「ここ? ここが空いてるわけ、ボブちゃん? エンプティ?」
ボブちゃんは、返事はせずに、ただ軽くうなづいた。
ガチャン。
権藤さんがそのロッカーを開けると、中はホントにエンプティだった。
「オーケー。じゃあ、ここ使って。ボブちゃん、ありがとね」
「サンキュー」
私がそう言うと、彼は片目をつぶりながら言った。
「ピース」
ピース・・・・・
「ピ、ピ、ピ、ピースですか、中国人のボブさん?」
そんなことを考えながら、茫然と彼を見つめる私を横目に、ボブちゃんは再 びヒップホップのミュージックに合わせて、軽くシェイクし始めたのだった。
                      ひろ



7月19日号 NO.167
『ニューヨーカーへの道』〜友達作り1〜
友達作りの話です。
やっぱりアメリカに来たならアメリカ人の友達を持ちたいですよね。アメリ カ人とつるんでると、なんか偉くなったみたいな充実感があるじゃないです か。「オレは、他の日本人とは違うぞ」ってヒソカに思っちゃったりして。 アメリカ人の友達と一緒にいる時に他の日本人に遭遇したりしたら、もうた まりませんよね。うれしくて、うれしくて。アメリカ人の友達が多いほうが アメリカの社会に入ってるわけですから、当然他の日本人に接する際もそれ が相手を計る基準になりますよね。アメリカ人の友達が多いほうが偉いに決 まってます、ホント・・・
と上記のような考えを持つ方は、普通細いウンコしか排便できません。なぜ ならケツの穴が小さいからです。
あなたはケツの穴が小さい、さびしい人間です。そのことを思い知りなさ い。ちなみに私も以前は極小肛門を持つロンリー・パーソンでした。
アメリカ人の友達をGetする際によく目にするのが、「無理した友達作り」現 象です。
まず第一に、友達というのは、「いっぱい欲しいなあ」と思ってできるもの ではないと、わたくし、思うのであります。また、友達になるために相手に コビを売ったり、ご機嫌取りをしたりするのもナンセンスですね。
日本にいる時、そんなことしなかったでしょ。だから、アメリカに来て急に そんなことやっても不自然なだけなのであります。
しかしながら、アメリカに住む日本人の中には、そこを勘違いして、無理し て友達をいっぱい作ろうとするわ、アメリカ人にコビるわ、という人たちが 結構いたりするのであります。
こういう人たちにとって大切なのは、「アメリカ人の友達が何人いるか」と いうことですね。一般に彼らは、他の日本人をそれによって尊敬したり、軽 蔑したりする傾向にあります。
つまり、アメリカ人の友達をたくさん持つ日本人=「すんご〜い、尊敬し ちゃ〜う」、アメリカ人の友達をあまり持たない日本人=「フン、話にならな いわ」てな具合にです。
この「アメリカ人友達量」価値基準を持つ人は意外と多く、こちらに長く住 む人の中にも、その会話の中に「あたしって、アメリカ人の友達、結構いる のよね」的なニュアンスを匂わせて、自己満足に浸る人がかなりおります。
こういう人は、「アメリカ人の友達をたくさん持つ」ということで自分を評 価して欲しいわけでありまして、ということは、他の日本人に対してもそれ を基準に評価しておるのであります。
なんかむなしいですね。
一応、わたくしは、そのような人物に接する際は、「ボク、アメリカ人の友 達、いっぱいいるんですよね」とウソをつくようにしています。当然、彼ら は私を羨望のまなざしで見つめるわけです。
で、ここからがおもしろいのですが、彼らは次にそんな私と付き合っている 自分のことを自慢し始めます。「私がつるんでる日本人は、アメリカ人の友 達をたくさん持つ日本人だ=だから私もその一員でアメリカ人の友達がたく さんいるのだ」的にです。
そこまでうまく行ったら、突然告白します。「実を言うと、ボクって、アメ リカ人の友達、じぇんじぇんいないのよね。カッカッカ」。相手は通常ビッ クリし、私のことを一転して軽蔑するようになります。
それ以後はもう口もきてくれません。
ホントにさびしい人たちですね。
                        徹
               

「ぶりてんNuts」編集部


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