◆1998年5月第1週のぶりてんコラム◆
5月9日号 NO.145
『たわごとコラム』
ここに昨日(5/8)、ニューヨークの日本国総領事館が日系のマスコミ向けに
流したプレスリリースのコピーがある。その内容を転載する。
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邦人事故のお知らせ
5月8日、ニューヨーク市警(6th Precinct)より邦人の射殺事件につき通
報がありましたところ次の通りです。
7日深夜12時頃、ニューヨーク市内ウエストビレッジに居住する槙奈緒美
さん(まき・なおみ、23歳)が自宅付近の路上で顔見知りの米国人男性に
頭部を撃たれ死亡する事件が発生した。現場から逃走した容疑者の米国人男
性は近くの地下鉄の駅付近でニューヨーク市警により逮捕された。
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地元メディアの報道によると、この米国人男性は、彼女の彼氏あるいは元彼
氏らしい。
その彼に彼女は路上にて銃で頭をブチ抜かれた。
まるで映画のようだ。しかしこれは現実なのである。
「だからニューヨークはコワイ」「だからアメリカはコワイ」とは言いたく
ない。
実際、ニューヨークでもこういう事件はなかなか起きないのだ。でも、アメ
リカ的な事件であることは間違いない。
それが今回、偶然日本人女性の身に起きてしまった。それも23歳の・・・
この知らせを聞いた時の彼女のご両親の反応を考えると、この街に居続ける
ことに揺らぎを感じてしまう。
「あなたの娘さんがニューヨークの路上で射殺されました・・・」
私たちは生きなければならない。
絶対に生きなければならない。
ひろ
5月6日号 NO.144
『NYウエイター物語』〜寿司政4〜
「その5回って、土曜日も入れていいのかな」
権藤さんはコーヒーのカップを口に運びながら私に聞いた。
「大丈夫です」
「うち、日曜は休みなのね。だから、週日に一日休みであとは全部」
「はい」
「なんかバッチリだなあ。決めちゃおうかなあ。ねえ?」
「え? はあ、決めていただけたらこちらとしても・・・」
「うれしいよね」
「はい。ホントに」
まだ私は自分のコーヒーをひとくちも飲んでいなかった。
「ところでさあ、ビザって何持ってるの?」
「F-1です」
「そうだよね。学校行ってるんだもんね。う〜んと、うちとすれば何も問題
ないから、あとは・・・え〜と、別にないかなあ。それ、飲んじゃっていい
よ。遠慮せずに」
「はい」
やっと私はそのコーヒーカップの蓋を開けることができた。一口飲んだコー
ヒーはまだ温かかった。
「こっちに来て何年になるの?」
「1年半です」
「まだ1年半かあ。オレなんかもう3年だからなあ」
「権藤さんは、もともと日本は・・・」
「東京。でも、この店に来る前に働いてたのは北海道なんだけどね」
「北海道ですか」
「うちの支店が札幌にあってね。竹・・・下さんだっけ?」
「竹中です」
「そうそう、竹中さん。竹中さんはもともとはどこなの?」
「熊本です」
「肥後熊本かあ。うちのお店はないなあ」
「お店ってそんなに沢山あるんですか」
「全国で36店舗かな、今のとこ」
「すごいですね。じゃあ、ニューヨークにも転勤で」
「そう。うちの板前はみんなそうだね。でも、海外はここだけだよ」
「へえ〜。でもやっぱ、それっていうのは、ニューヨークがポイントってい
うことなんですか」
「ううん、ただうちの社長がニューヨーク好きなだけ」
ふたりの静かめの笑い声が、乾いた座敷に響いた。
ひろ
5月5日号 NO.143
『ニューヨーカーへの道』〜学校へ行こー4〜
「ニューヨークの大学付属の英語学校に行きたいんですけど、どこがいいで
すかね」
ニューヨークに来たばかりの日本人の方、あるいは、まだ日本にいて今から
ニューヨークに来ようとしている方からよく受ける質問のひとつです。
そういう場合、わたくしがどう答えるかと言いますと、
「知ったことか、このアホンダラが!」
と答えるわけがありませんね。
その質問を受けた時、わたくしはまず、「お金はあるの?」と聞くことにし
ております。
その質問に大胆にも「イエス」と答えるフトドキモノには、「地獄に落ち
ろ!」と言うかわりにニューヨーク大学やコロンビア大学の英語学校を紹介
することにしております。
もし相手が貧弱な声で「ノー」と答えた場合は、ニューヨーク市立大学付属
の英語学校の名前を挙げ、ついでにチップの稼げる日本食レストランをアル
バイト先の候補として紹介しております。
一般的に私立大学付属の英語学校の方が、市立大学付属のものより授業料は
高くなります。
でも、当然、授業料の高いほうが、施設その他もベターになります。
わたくしが通っていた市立大学付属の英語学校の場合、夜間クラスは、ある
高校の教室を借りてやっておりました。
教室の壁には、ガキどもが描いた落書きなんかがあったりして、なかなか味
わいのある風景でございました。
私立の場合、そういうことはありませんね。
ただ、授業内容については、私立と市立の間にはそんなに大きな差はなさそ
うです。
こういうことを言いますと、私立の英語学校関係者は、「そんなことはな〜
い! 授業料が高い分、その内容も充実してるんだから。まったく失礼よ
ね」と反論してくるのでありますが、まあ、その気持ちもわからんこともあ
りません。
特に高い金出して私立大学の英語学校に通った人間にとって、「私立も市立
も授業内容は大してかわらんから、高い金出した方が損なのよ」という事実
は悔しくて認められるわけがないのであります。
でも、実際、両者の授業内容にはそれほど大きな差はないはずなのでありま
す。
私自身は、私立付属の英語学校に通ったことがないので授業内容についての
詳しいことはよくわからんのですが、少なくとも私立と市立の間で先生が
行ったり来たりしてるのは知っております。
例えば、コロンビアから市立大学へというケースもありますし、その逆の
ケースも存在しております。
アメリカの英語学校の場合、授業の良し悪しは、基本的に先生の実力に正比
例しております。つまり、授業の充実度は先生次第なのであります。
ニューヨークではその先生を、ある意味で私立と市立で共有しておるわけで
して、そしたら授業内容も大して変わらんべな、という結論に導かれてしま
うのであります。
市立大学付属の英語学校に通う日本人学生諸君、私立組に対して劣等感を持
つ必要はないのだよ。
確かに君たちは「入れ物」負けしている。教室の壁の落書きが君たちに向
かって「この貧乏人が!」と語りかけてくることもおじさんはよ〜くわかっ
ておるのよ。
でも、ヤル気さえあれば、私立と同じように勉強できるのです。
さあ、辞書を片手にテキスト開いて予習復習しようじゃありませんか。
なに、今からバイトだって?
ふむ、世の中うまく行かんもんじゃのう。
徹
4月26日号 NO.140
『ニューヨーカーへの道』〜学校へ行こー3〜
ニューヨークで英語学校に通うほどアホくさいことはない、という話があり
ます。英語学校に通う日本人が多すぎるのですね。
クラスで、右を向いても日本人、左を向いても日本人、その中でなんで私は
英語しゃべってるわけ?という疑問に襲われることもあるらしいです。
「英語を勉強するには地方が一番」という意見をよく聞きます。まわりには
イエロー・ピープルはほとんどおらず、つまり白黒の世界になります。
その中で英語漬けの生活を送る。確かに英語をしっかり勉強するのであれ
ば、そのほうがベターでしょう。
ただ、ニューヨークの英語学校にもいい点はあります。いろんな日本人と出
会えるのです。
日本人と出会うためにニューヨークの英語学校に通う。
奇妙なサウンドがありますが、私はそういう目的意識もあっていいと思いま
す。
ニューヨークの英語学校に通う日本人には、いろんなタイプがあります。
「日本の会社でOLやって早5年。なんか満たされないものがあったの。だか
ら思いきって会社辞めて、ニューヨークの英語学校に通うことにしたの」タ
イプ。
「日本でダラダラしてるのもなんだから、ニューヨークに来ちゃった。ビザ
の関係で学校に通うことになって、とりあえず英語学校に入ったってワケ。
勉強は嫌いだけど、まあビザのためだからしょうがねえよね」タイプ。
「日本で高校卒業して働いてたんだけど、こっちで自分の専門の勉強したく
て、まずは英語を勉強するために英語学校に入ったんだ。大学にアクセプト
されるまでは、ここで英語の勉強してると思う。ねえ、どっか安い英語学校
知らない?」タイプ。
「ニューヨークで暮らすことが昔から夢だったの。もういい齢だし、そろそ
ろやらないと手遅れになっちゃうから、とりあえず来たのね。滞在予定は半
年。その間、思う存分ニューヨークを楽しみたいわ」タイプ。
「最初は、なんとなくニューヨークに来たんだけど、同じレストランで働い
てる子が、夜バイトしながら大学に通ってるのを見て、自分もなんか勉強し
たくなっちゃって。日本にいた頃は大学に通いたいとも思わなかったのに不
思議なもんだよ。今、TOEFLの点数上げるために猛勉強してるんだ」タイ
プ。
「こっちに駐在で送られてきたのはいいけど、もう1回英語をしっかり勉強
したくてね。夜のクラスに通ってるんだ。周りは結構若い子が多いけど、み
んないろんなバックグラウンドがあっておもしろいよね。会社じゃ会えない
もんね、こういう人たちって」タイプ。
わたくし、東京で2年ほど暮らしたことがあるのですが、あそこは人と知り
合うのがホントにむずかしい街でしたね。また、知り合ったとしても、つる
むのは同じ世代の人たちばっかり。バラバラの人種にドサッと知り合うって
ことはほとんどなかったのであります。
そういう意味で、ニューヨークの英語学校というのは、いろんな人と知り合
えるという点においてはエクセレントなのではないでしょうか。
海外に出ているせいで、出会い後のキズナもなかなか強いものがあり、お互
い別れ別れになったあとも、付き合いが続いたりすることも結構あります。
「ニューヨークに行ってまで、なんで日本人と知り合う必要があるわけ?」
という意見もあるでしょうが、そういうあなたも「人との出会い」を求め
て、日本で切手収集のサークルだとか「ガンダム」のファンクラブなどに入
会しませんでしたか。しませんでしたね、はい。
たとえが悪すぎました。
でも、いろんな人と知り合うために、クラブだとかサークルに参加する人は
日本にも大勢いるわけでして、それを単にニューヨークでやってるだけなの
よ、と考えれば、「ニューヨークの英語学校で日本人の友達作り」案もそれ
なりの説得力を持つのではないでしょうか。
持ちませんか?
さみしいヤツだなあ、キミは。
徹
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