◆1998年4月第4週のぶりてんコラム◆
4月24日号 NO.140
『NYウエイター物語』〜寿司政2〜
寿司政のドアを開けると、そこにはいきなりバーがあった。
ひとりの神経質そうなおじさんが、バーの背の高いイスに腰掛けて読売新聞
を読んでいた。そして、こちらをチラリと見た。
そのおじさんはすごく疲れた目をしていた。
「あの〜、スイマセン、アルバイトの面接に来たんですけど、権藤さん、い
らっしゃいますでしょうか」
「ちょっと待って」
疲れ目のおじさんは、ゆっくりとイスから立ち上がると言うよりはズリ落ち
て、私の目の前にある小さな机の前に立った。
その机は、机というよりは発表者の原稿置きといった感じのもので、そこに
は電話、店のビジネスカード、つまようじ、ミントが入ったガラスの瓶が置
いてあった。
彼は電話の受話器を取り、ダイヤルを押した。
しばらくの沈黙。
「もしもし、店長ですか。アルバイトの面接の人が来てるんですけど、
・・・・はい、・・・はい、お願いします」
そう言っておじさんは受話器を置いた。
「ちょっと待ってて。今、来るから」
「あ、スイマセン」
彼は、まるで自分のやるべきことはすべて終了したかのようにイスに戻り、
再び新聞を読み始めた。
奥から白衣を着た男性が歩いてきた。
それは、さっき、店からゲタをカラコロ鳴らしながら出てきた人だった。
「お待たせしました。こっちにどうぞ」
その手には、先ほどの紙袋がまだ握られていた。
「はい」
私はそう言って、彼の後について行った。
左手に寿司カウンター、右手にはテーブルがいくつかある。ライトは消えて
いた。きれいな店だった。
寿司カウンターの前を通り過ぎようとした時、そのイスの上に何かが寝そ
べっていることに私は気がついた。
それは人だった。
カウンター用のイスを4つくっつけて並べた上にその白衣を来た人物は腕組
みしながら寝ていた。
「こっちです」
彼は私の方を振り向いて声を落としながら言った。
寿司カウンターとテーブルを通り過ぎた右手にフスマのようなものがあっ
た。いや、フスマのようなものではない。それはフスマそのものだった。
彼はゲタを脱ぎながら、そのフスマを開けた。
そこには、私にとって数年ぶりに見る畳たちが寝そべっていた。
ひろ
4月20日号 NO.139
『Prof. New York』
現在、大学にあるコンピューターラブで働いておりますが、そこにギリシャ
人のジョンがおります。
この男、南方系出身に違わず、やはり「出来るだけ、仕事をサボる」という
ポリシーを持ち続けております。
以下は私とジョンの会話であります。
「Hey what's up? いつここに来た?」
「よお、ジョン、一時間前くらいかな」
「相変わらずアジア人は時間に正確だな」
「そおか?」
「おまえ等、もうちょっとサボれよ」
「しょうがないよ、国民性だもん」
「俺の職場にもチャイニーズのトムって奴がいるんだけどよ、そいつ昼飯が
終わったら、すぐに職場に戻るんだよ」
「ふーん、それがなにか?」
「そいつ、インターンで金貰ってないんだぜ。そんな奴がすぐに職場に戻っ
て、金貰ってる俺が1時間も2時間もランチに行ってちゃ体裁が悪いじゃね
えか」
「・・・」
「で、今何やってんだ?」
「この新しいコンピューターにネットワークカード付けて大学のネットワー
クにつなげてるんだ。あと3、4台つながないといけない」
「ふーん、俺も手伝うよ」
「じゃ、そっちのコンピューターお願いね」
「判った。しかし、うちのデパートメントもがんばるよな。金ないのにどっ
からこんなコンピューター持ってくるんだろ?」
「確かにな」
「・・・おいおい、そんなに急いで仕事するなよ」
「え?」
「そんなに急いで終わらせたら、次の仕事が回ってくるだろ。だからもっと
ゆっくり仕事しろよ」
「・・・判ったよ」
「そういやさ、ハウジングのクラスのプロジェクトもう終わった?俺なん
か、全く手も付けてないんだけど」
「いや俺もまだだよ」
「しかし、あのクラスかったるいよな。教授最悪だし・・・。おいおい、だ
から速いって言ってるだろ!もっとゆっくりやれって」
「ゆっくりやってるじゃないか!」
「まだ速いんだよ。それじゃ、時間内に終わっちまうだろ。いくら仕事をこ
なしたって時給上がるわけじゃないんだから」
「判ったよ、うるせーな」
「だから、速いって!」
「おまえなぁ、これでもゆっくりやってるんだよ!」
「ったく日本人は・・・。もういいよ。おまえそこで座って本でも読んで
ろ。あとは俺がゆっくりやるから」
こうして、NYのとある大学のコンピューターラボでは、働き者と言われる
日本人がサボり、怠け者と思われているギリシャ人が働く、という奇妙な光
景が多々出現するのであります。
MediaBlitz
4月19日号 NO.138
『ニューヨーカーへの道』〜学校に行こー2〜
ニューヨークの英語学校などに通い始めて、最初に直面する問題は「日本人
がいっぱいいっぱいで、なんでアメリカにいるのかわからんでないの」とい
うものです。
ニューヨークの英語学校には日本人が溢れております。これはネガティブな
意味で「日本人が溢れております」と言っているのではありません。でも、
別にポジティブな意味でもないのであります。ただ単に事実として「日本人
が溢れております」なのですね。
私が通ってた英語学校にも日本人がたーくさんいました。
ただ、私の場合、友達ができづらい性格を持っておるせいで、他の日本人の
方々と遊んで回ることはあまりなかったような気がします。
確かに「日本人イヤイヤ病」にもかかってたのですが、それ以前の問題とし
て、「集団嫌い」「あまのじゃく」などの性格が威力を発揮していたと思い
ます。
でも、よく考えたら、他の人種の方々ともつるんでませんでしたね。アメリ
カ人の友達も前回お話ししたクリスティーンというステゥーダント・アドバ
イザーを除けばほとんどいませんでした。
今思うと、アメリカ人の友達を探すことさえしませんでした。
おそらく無意識のうちに、「私は基本的に人類とは気が合わない」と悟って
いたのではないでしょうか。
でも、私の場合はそれが結構いいほうに働きましたね。「アメリカ人の友達
ができな〜い」と悩むこともありませんでしたし、もともとひとりぼっちな
性格のため、「海外生活ひとりぼっち」のさびしさも味わうこともありませ
んでした。
ラッキーとしか言いようがありません。
まったく。
ニューヨークに住む日本人の中には、「アメリカ人の友達が欲しい」と力強
く思っている人もいますが、その際、同時に考えなくてはならないのは、
「果たして自分が友達のできやすい性格を有しているか」という点について
です。
ナチュラル・ボーン的、つまり生まれながらに「友達のできにくい性格」を
持つ人がいくらがんばってもアメリカ人の友達はできないのであります。も
しかしたら、日本人の友達さえできないかもしれません。
そこのところを自分できっちり認識せずに、友達作りのために周りのアメリ
カ人たちに手当たり次第に体当たりしても、それは傷を深めるだけになりま
す。
「ボクにはなんでアメリカ人の友達ができないんだろ。こんなにがんばって
るのに・・・」
最近、そんなことをふと思ってしまう貴方、もしかしたらすんげえ性格悪く
ないですか。
それだったら無理よ。アメリカ人の友達なんかそう簡単にはできましぇ〜
ん。
でもね、中には貴方と同じように性格がすんげえ悪いアメリカ人もきっとい
ます。そういう人たちとはきっと友達になれるはずです。
普通のアメリカ人を探すのはやめて、貴方と似た変人アメリカ人を探すよう
に心掛けましょう。
変態性は、人種や文化を越えて存在するのであります。
徹
Return to Home Page