◆1998年4月第2週のぶりてんコラム◆




4月11日号 NO.134
『ニューヨーカーへの道』〜学校1〜
日本人がニューヨークに住みに入る際のカタチとして一般的なのは、「駐在 員」そして「学生」なのであります。
ここでは、その「学生」が「学生」であるためにとっても必要な学校の話を しましょう。
わたくしの個人的な見解では、ニューヨークの日本人にとっての「学校」で もっともポピュラーなのは「英語学校」になります。
わたくしも一時期通っておりました。
ステゥーダント・アドバイザーの方がなかなかかわいい白人女性で、名前も クリスティーンというなかなかアメリカ的な名前で、性格もなかなかラブ リーなのでありました。
生まれて初めて強く接触したアメリカ人女性がこの方なのでありました。
「接触」というのは、「人間的に」という意味においてでありまして、「肉 体的に接触」という意味ではありませんので、変な想像力を働かせないよう にお願いいたします。
なにはともあれ、そのクリスティーンはかなり魅力的な女性だったのであり ます。
そうなりますと、惚れるしかありません。
アメリカに渡って、いきなり白人のかわいいねえちゃんに惚れる・・・・
美しいストーリーです。すばらし過ぎます。
でも、結果的には「惚れる」ところまでは行きませんでしたね。
何回かふたりだけで食事に行きました。
初めてのお出かけ(デートではない)の時、彼女はカバンからタバコを取り 出して火を付けました。
「え? タバコ吸うの?」
「そう。でも、学校じゃ吸わないの。なんか吸いづらいしね」
彼女が「吸いづらい」と言った理由が私のはよく分かりました。だから私も 思わず「え? タバコ吸うの?」と聞いてしまったのです。
彼女はその英語学校のアイドルでした。「天使のような存在」と言い換えて もいいでしょう。
その彼女からは、タバコをプカプカ吸ってる姿は想像できませんでした。彼 女自身、学校で演じる自分にタバコ姿が似合わないことがよく分かっていた のです。
だから彼女は学校ではタバコを吸いませんでした。
「ふ〜ん、大変ね」
私はボソリとそう言いました。
その時、私の中で何かが音を立てて崩れていくのが分かりました。そして、 それが崩れさったあと、私の中に残ったものをひとことで表わしますと、
「クリスティーンもウンコする」
ということになります。
でも、私がクリスティーンに惚れなかったのは、彼女もウンコするというこ とに気がついたためではありません。
いや・・・間接的にはそうかもしれない。ということは、私はウンコが嫌 い・・・
文を書いていると、意外な自分を発見することがあります。
こわいですね。
                       徹



4月10日号 NO.133
『Prof. New York』
移民法のクラスの中、話題は日系人強制収容所にたどり着いた。
移民の専門家であったその教授は、日本人である私だけにでなく、色々な文 化的背景を持つ生徒全員に向けて、静かに話を始めた。
第二次世界大戦中、西海岸に多く移住していた日本人、日系人は強制収容所 に入れられアメリカ社会から隔離された。
彼らは、アメリカ人としての国籍を持ちながら、しかし土地も家も財産をも 奪われ、フェンスの中に閉じ込められた。彼らは、アメリカが持っていた日 本に対する必要以上の恐怖と憎悪のため、保証されていたはずの自由を、 失った。
色々な国からの移民で構成される多民族国家アメリカで、この収容所が意味 するものは大きい。
何を持ってアメリカ人とし、何を持って非アメリカ人とするのか。戦争とい う異常事態の中、何を持って安全人物とし、何を持って危険分子と見なすのか。
今現在、カナダ、台湾、ドミニカ共和国など、いくつかの国が二重国籍を容 認し、多くの人がそれを保持している。
平和が維持されている間、その問題点が顔を出すことはない。しかし、非日 常の中では、その道徳的問題が浮き彫りになる。
国籍を保持する両国間で戦争が起こった場合、彼らはどちらを切り捨て、ど ちらの側につくのか。どちらの国に反逆し、どちらの国に再忠誠を誓うの か。
そして彼らはどのようにして、それを証明するのか。
これらの問題を解決しない限り、第二の日系人強制収容所が起こる可能性 は、否定できないであろう。
クラスが終わり、生徒が家路につく中、チャイニーズアメリカンのデイ ヴィッドが、日本人である私に近づいてきてボソッと言った。
彼は以前、日系人強制収容所のドキュメンタリーを見る機会があった。その フィルムの間中、彼の眼から涙が止まらなかった、と。
中国系アメリカ人の彼の眼には、そのフィルムを通して何が写ったのだろ う。
今度、それを聞いてみようと思う。
                        MediaBlitz



4月8日号 NO.132
『たわごとコラム』〜「自由」中毒〜
 日本に住んでいる人の大部分は、ニューヨークに住む日本人の話を聞いた りすると、「きっとニューヨークで楽しく暮らしてるんだろうな」と思うの ではないだろうか。
 ところが、現実はそうバラ色バラ色サクラ色しているわけではない。日本 人にとって、このニューヨークという街は精神的になかなかタフな生活空間 なのである。
 ここには、できれば日本に輸出したいほどの「自由」がある。この街に来 たら、自由の女神が耳元で「なにしてもいいのよ」とささやいてくれるので ある。そのせいで人々は調子こいて、なんでもかんでもやってしまうのだ。
 「いや〜ん、そんなに自由なんだ。うらやましー」と思う人もいるだろ う。でも、「自由」慣れしてない日本人の中には、それをうまくコントロー ルできなくて、「自由」中毒になってしまう人もいるのである。
 自由というのは、ある意味で、自分のやることについてまわりの人間たち がガタガタ言わないということである。「やりたいことをやりなさい。た だ、自分のケツは自分で拭くのよ」。それが自由の掟である。
 子供の頃からその脳ミソと行動に漬け物石を置かれたような重圧感を感じ る日本では、それは夢のような世界かもしれない。
 しかし、である。この自由というやつは、いい面と同時に悪い面も合わせ 持っている。上へ上へと登ぼって行こうとする挑戦者たちを止めないかわり に、下へ下へと真っ逆さまに落ちていく脱落者たちにも何もしないのだ。
 その点、日本には、登ぼって行こうとする人を引きづり落とすが、本当に 堕落しそうになると、救いの手を差し伸べてくれたりするココロがある。実 際、人々は知らない間にその落下制御装置的ココロに助けられているのであ る。
 そういう日本で育った日本人がニューヨークに来て、急激に自由を胸一杯 吸い込んだりすると、一気に「わーい、自由だ、自由だ」的ハイ状態になっ たりする。それがいい方向に働けばいいのだが、麻薬などのマイナスサイド に走ってしまうことがある。
 その時、日本なら、誰かが「よっこらしょ」と助けてくれるかもしれな い。でも、ここはニューヨーク。すーっと落ちて行くこともその人の自由の 一部なんですな、これが。
 もしニューヨークに来ることがあったら、自由の吸い過ぎに注意しましょ う。また、その自由の箱に書いてある「やりたいことをやりなさい。ただ、 自分のケツは自分で拭くのよ」という但し書も読み落としのないように。
                      ひろ



4月7日号 NO.130
『NYC Traffic Jam』
エアバッグ
我々の命を守るべく知て登場したこのシステム、最近は色々な車 に装備されているのだがニューヨークのタクシーもその例外では ない。
ま、お客の命を預かる商売である、装備されてもおかしくないど ころか、一番最初に取り付けなくてはならない類の車かもしれぬ。
しかしこの前、ニューヨークのタクシーは取り付けない方が良い のではないか、という光景を私は目撃した。
それは夏のように暑かった先週末の話である。私は友達との待ち 合わせ場所であったヴィレッジの本屋に向かって歩いていた。
目の前をイエローキャブが通り過ぎていく。そのテールランプを 眺めながら、「そういえばNYC Traffic Jamのネタを探さねばなら んな」と思った瞬間、それがドカンという爆音をたてた。
よく見ると煙まで立ち昇っている。
何が起こったのだろう、とそのタクシーの前まで回ってみると、 車には何の外傷もないのに、運転席と助手席のエアバッグが見事 に大爆発していた。
原因はすぐに判った。道路舗装工事のためアスファルトがえぐら れていたのだが、その段差を通り越したショックでエアバッグが 作動したらしい。
大雑把なアメリカにしては、なんてセンシティヴなシステムなん だ。
ま、そんな事は良いとして、驚いたのはその威力である。助手席 側のエアバッグが爆発した影響で、何とフロントガラスが割れて いるではないか。しかもベキベキに。
多分エアバッグがダッシュボードのプラスティック板を跳ね上げ た瞬間、それがガラスにぶち当たっのだろう。
でも割れるか、普通。
という事はである。もし何かの拍子にペンか何かがダッシュボー ドの前に転がり落ち、それを取ろうと手を伸ばした瞬間エアバッ グが作動したら、その手は見事に複雑骨折をするにちがいない。
ああほんとにオソロシイ。
もしNYでタクシーに乗る事があるのならば、なるべく助手席は避 けるように、と私は皆さんに警告しておかねばならぬ。穴があち こちに開いた凸凹道路ばかりのニューヨークでは、こんなに見事 な殺傷能力を持ったエアバッグから出来るだけ離れた方が懸命だ からだ。
しかし、あなたが誰かに保険金をかけて殺したいのであれば、こ れは利用する価値があるかもしれない。うまくいけば保険金に加 え車会社から慰謝料がうなるほど入ってくるにちがいない。
でもこのアイディアは私の物だから、成功の暁には10%のアイ ディア料を払う事を忘れないよう、くれぐれもお願いしておきま す。
MediaBlitz

「ぶりてんNuts」編集部


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