◆1998年3月第3週のぶりてんコラム◆




3月21日号 NO.123
『ニューヨーカーへの道』〜最初の基地探し3〜
スタッテン・アイランドの語学学校時代に、わたくし、アーというタイ人の 友人を作りました。
このアーくん、なかなかの好人物でして、「さすが”ほほえみの国・タイ” から来ただけのことはある」などと、わたくし、ひとり納得しておったので あります。
ところで、わたくしたちふたりとも、できるだけ早い時期にニューヨークと はとても思えないこのスタッテン・アイランドから脱出したいと考えており まして、「脱出するのならやっぱりマンハッタン、それならアパート探しま しょ」と早速マンハッタンの基地探しを始めたのであります。
ここでポイントとなるのがその探し方ですね。
新聞とかその辺に置いてあるフリーペーパーで探したり・・・ということ は、私たちの場合はありませんでした。
タイ人学生というのはですね、独特の横のつながり、ネットワークのような ものを持っておりまして、口コミのアパート情報というのが人々の間を飛び 交っておったのであります。
その中のひとつをこのアーくんがうまくグラブしたのです。
ですから、私の場合、マンハッタンでの「最初の基地探し」はハナクソのよ うに簡単だったのですね。
この文をお読みの方の中には、「最初の基地探し」において散々苦労された 方もいらっしゃることと思います。
あなたは不幸です。ご愁傷さま。
さて、問題のアパートはアッパーイーストサイドに位置しているという噂で した。
「アッパーイーストサイドって、なんか”イーストサイド物語”みたいで カッコいいじゃん」
”ウエストサイド物語”を”イーストサイド物語”だと思ってたぐらいの私 でしたから、マンハッタンの地理についてはほとんど無知でしたね。
そこでマンハッタンの地図でそのアパートがどの辺に位置していくか調べて みたのです。
見つけました。そして、そこにはこう書いてありました。
「イースト・ハーレム」
ハーレム。
ニューヨークに来たばかりの人間にとって、その名は、心躍る、いや、心震 える響きがあります。
「ハ、ハ、ハ、ハーレムって、い、い、いくつもあるんですか」
わたくし、知り合いのアメリカ人たちにそう聞いて回りました。
ほとんどの人間の反応は以下の通りでした。
「え〜? おめえ、ハーレムに住むのかよ?」
でも、今考えますと、彼らもかなりの田舎者だったのでありまして、マン ハッタンに出るのでさえ緊張するような連中だったのであります。
というわけで、わたくし、アパート探しの努力は必要なかったのですが、そ の分、変なドキドキ感を持ち続けなければなりませんでした。
世の中うまくできております。
                        徹



3月20日号 NO.122
『NYウエイター物語』〜仕事探し7〜
次の火曜日、新しいOCSニュースを買った。ウエイターの仕事を探すため だ。
いろんなレストランの求人広告が載っている。イーストビレッジのレストラ ンあり、ミッドタウンのレストランあり。
やっぱりキッチンヘルパーより、ウエイターの仕事の方がよりどりみどり だ。黒いボールペンで良さそうなところに丸をつけていく。
「ここはイーストビレッジだからダメ・・・ここはOKかな・・・これはなん となく汚なかったからパス・・・」
とりあえず、今まで聞いた噂や外観などを考え合わせてピックした結果、最 終的に4つのレストランが残った。すべてミッドタウンの高級レストラン だ。
その中に、「寿司政」というレストランがあった。この前、キッチンヘル パーのインタビューを受けに行った時、偶然その前を通ったのだ。
「へー、こんなところにもレストランがあるんだ」
その寿司政というレストランの存在を知ったのは、それがはじめてだった。
いかにも高そうなレストランだった。
OCSの求人広告も他のレストランの広告に比べて大きかった。普通ならクラ シファイド広告の4、5行で済ますのが、このレストランの広告は10行以 上のスペースを使い、ついでに「日本の味」だのどうのこうのと、求人には 別に関係ないことが書き加えられていた。
「金がありそうですな・・・」
最初に攻めるレストランは、そうやって決まったのであった。
                        ひろ



3月16日号 NO.120 『たわごとコラム』 まず、下味をつけた牛肉とブロッコリを低温の油で火を通し、油を よくきる。さらにそれをさっとお湯で濯ぎ、中華なべの中でソース に絡ませる。 これが今日の晩飯「beef with broccoli」が出来るまでのプロセス だ。 料理は嫌いではないが、最近全くする気のしない私は、週に3回は チープなチャイニーズ・フードにお世話になっている。マクドナル ドなどのハンバーガーなどは食う気がせず、やはり白メシがいいの だ。その点、NYは色々なアジアの料理が食えてありがたい。 ところで、このNYの中には中国人が経営する日本料理屋、という奇 妙なものが存在する。 しかも、これは中国人が同胞向けにやっている日本料理屋ではなく 、ちゃんと非中国人相手に商売をしているのである。 その原因は、アメリカ人は中国人も日本人も韓国人も区別がつけら れないからだろ、と思うかもしれない。そしてそれはある意味正し いのかもしれない。 しかし、この現象を生み出す真の原因は、アメリカ人の日本食とチ ャイニーズ・フードに対するイメージの違いにある。そしてその違 いは、両方のメニューに確実に現れているのだ。 それは値段である。 NYにある一番安いジャパニーズ・レストランとチャイニーズのヌー ドルショップを比べてみても、それは比較にならないほどチャイニ ーズの方が安い。 チップと合わせて$5もあれば腹一杯になってしまうのである。 この安さは、ひとえにチャイニーズ・コミュニティーのデカさにも よるだろう。コミュニティーが大きいということは、それだけ色々 な所得層がいる、ということだからだ。 しかし、それだけでは中国人経営のジャパニーズレストラン、とい う現象は説明できない。 これは、さっきも言ったが、「日本食は高い」というイメージを中 国人が利用しているから起こるのだ。 同じ単価で出来る二つのものがあるとして、どちらかが高い値で売 れるとすれば、人々は確実にその方に飛びつくに違いない。彼らは 文化的なバックグラウンドをかなぐり捨て、より儲けが大きいジャ パニーズレストランを、商売の原則にのっとって選んだというわけ なのだ。 ちなみに私はそういった中国人経営のレストランでカツどんを食っ たことがある。 その時、私は飯の上にのった卵とじの中から、豆腐とワカメを発見 した。どうやら、タレがなくなったために味噌汁を代用したものと 思われる。 なくても売り切れとはせず、何とかカツどんを作り上げてしまう・ ・・。 やはり彼らは商魂たくましい。 MediaBlitz


3月17日号 NO.121
『たわごとコラム』
先日、コロンビア大学の大学院でジャーナリズムを専攻しているアメリカ人 学生にインタビューされた。彼はすでに20数名のニューヨークに住む日本 人にインタビューしていた。
その彼が言った。
「インタビューした日本人の多くは、”日本が合わない”という理由でこっ ちに来たって言ってたよ」
日本が合わない・・・・・
私は思うのである。「これって本当なのかしら」と。
日本にいた頃、彼らは頭の中で、「日本は合わないなあ」とか考えていたの だろうか。
もし、そうであれば大したものである。普通なら、自分の住む環境に埋もれ ちゃって、それを客観的に見ることはなかなかむずかしいからである。
「日本が合わない。じゃあ、アメリカへ行きましょ」
それぐらい軽いノリでアメリカに来る日本人がいるのなら、私は「すばらし い」と言わざるを得ない。
しかしながら実際は、「日本が合わない」というよりは、「こちらの方が暮 らしやすい」という理由が大部分ではないだろうか。
私の場合もそうだった。別に日本が合わなくてこちらに来たわけではない。 ただなんとなく出たのである。今でもニューヨークにいるのは、「こちらの 方が暮らしやすい」からだ。まあ、もう帰りづらいっていうのもあるけどね。
アメリカ人に対して日本のことを悪く言う風潮みたいなものが、NYJJの間に は存在している。今回の「日本が合わない」もその風潮が言わせたような気 がしてならない。
あなたが日本を出たのは、日本が合わなかったからですか。
それとも、なんとなくですか。
                        ひろ

「ぶりてんNuts」編集部


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