◆1998年12月第1週のぶりてんコラム◆
12月2日号 NO.203
『ニューヨーカーへの道』〜アルバイト探し2〜
ニューヨークにおけるアルバイトの四番打者は、やはり日本食レストランで
のウエイター・ウエイトレス業でしょう。
夜働けること、結構お金がいいこと、メシが食えること、など貧乏学生に
とってはおいしい条件がそろっております。
また、しっかり働けば家賃、生活費、授業料まで払えます。そうやって大学
を卒業した人も実際います。
女の子だったら、ピアノバーという手もありますね。日本のスナックみたい
な感じで、お客さんにお酒ついだり、一緒にカラオケ歌ったりするのです
が、これもお金的にはなかなかおいしいアルバイトです。
ただ、夜遅いこと、たまに変態オヤジがいること、お客さんと愛人関係を結
びやすいこと、結局それに溺れてしまうこと、など危険な部分も多々ありま
す。
意志の強い人だったら問題ないかもしれませんが、ニューヨークにいる目的
が宙ぶらりんな人にとっては、多少リスキーかもしれません。
まあ、それはそれで楽しいのかもしれませんが。
ニューヨーク特有のアルバイトとしては、ビデオ及び弁当の配達屋さんが挙
げられます。
ビデオの配達屋さんの場合は、日系企業のオフィスや日本食レストランなど
を回ってビデオを貸し出すのが仕事になります。昼間、ミッドタウン辺りを
うろうろしてますと、でっかいバッグを引っ張って歩いてる日本人のお兄さ
んたちを見かけます。彼らがそのビデオ配達屋さんなのであります。
お弁当屋さんの場合、その行動は基本的に午前中に限られてるようです。
だって、昼メシ用のお弁当を売って歩いてるんですから。
また、彼らのお客さんはほとんどが日系企業になります。通常は日本食レス
トランは含まれません。そりゃそうですよね。弁当屋さんとレストランは、
ある意味でライバル同士ですから、そんなところに売りにいくわけがありま
せん。行っても売れないだろうし。
でも、意外と売れたりなんかしたらおもしろいですね。「うちの昼メシまず
いからなあ」とかなんとかいってお弁当を買っちゃうウエイター・ウエイト
レスが続出したりして。その場合、やはりそれは店に対する裏切り行為とい
うふうに見られるのでしょうか。まあ、なにはともあれ、私は、身内にまで
見捨てられたお店には客として行きたくありませんな。
お弁当屋は、スタイル的にはビデオ屋さんと近いものがあります。こちらも
大きなバッグをグイグイ引っ張りながら街角を歩いています。
ところで、このビデオ&弁当配達業界にはひとつの謎があるのであります。
それは何かと申しますと、この業界では女の子のアルバイトというのをほと
んど見かけんのであります。
確かに重い荷物を持ってオフィスやレストランを回るのは大変ですが、でも
女の子であればもしかしたら売上が伸びるのではないかという思いを、わた
くし、捨てられんのですね。
今現在、あなたのオフィスやレストランに来てる厳(いか)つい兄ちゃんた
ちが、もし女の子だったら…。想像するだけでワクワクしませんか。毎日あ
るいは毎週、彼女が来るのが楽しみになったりなんかして。彼女の気を引く
ために毎回ビデオを20本ぐらい借りたり、食いたくもないのにお弁当を2個
も買ったり、などの現象も現れるかもしれません。
かなりオヤジ的考え方かもしれませんが、真理は突いてると思います。
ビデオ&弁当配達業界の皆さま、ご検討ください。
徹
11月30日号 NO.202
『NYウエイター物語』〜開店1〜
「はい、いらっしゃいませ!」
男性の声が店内に響いた。
「あら、もう来ちゃった」
私の横にいたアズミさんが、入口のほうを見てそういった。そこには、ビジ
ネスマン風の日本人男性が立っていた。
「少々お待ちください」
これからアズミさんが私に紹介してくれるはずだったカトウ氏は、その男性
にそういうと、店の奥に向かって急ぎ足で歩き始めた。
私たちふたりの横を通り過ぎる。
その彼にアズミさんが声をかけた。
「カトウさん、ちょっと紹介したいんだけど・・・」
「え?」
振り向いたカトウ氏は、私をチラリと見ていった。
「そんなのあとあと。もうお客さんが来てるんだから」
やはりここでのポイントは「そんなの」だろう。「そんなの」とは「紹介す
ること」を差しているのか、それとも「私」を差しているのか。
おそらく前者なのだろうが、そのいい方に微妙な悪意を感じるのは気のせい
か。いや、こいつはきっと根性悪に違いない。
彼はそういい残すと、”フン”っといった表情をして奥へとズンズン歩いて
いった。
「ほら、片づけて、片づけて。そこのダスタ−もだよ」
彼は、近くにいたパキスタン人のモハメッドにそういった。
「コレ、ワタシノジャナイ」
「いいから片づけるんだよ」
嫌味ないい方だった。
「・・・・・・・・」
モハメッドは無言でカトウ氏が”ダスター”と呼んでいたものを拾った。
それは単なる布巾だった。
「オ〜イ、竹中。ちょっとこっち来てくれ」
店の奥からメグロ氏が叫んだ。
「じゃあ、カトウさんにはあとで紹介するわ」
「はい、お願いします。じゃあ、またあとで」
私はアズミさんにそういって、奥へと歩き始めた。
人々の動きが急激に早くなっていた。ある種の緊張感の高まりを、私は歩き
ながら感じていた。
ひろ
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