◆1998年11月第2週のぶりてんコラム◆
11月14日号 NO.198
『NYウエイター物語』〜寿司政の人々14〜
「メグロさん、あたしにも紹介してくださいよ」
キッチンのほうから歩いてきた女性が言った。
きれいなひとだった。
他のウエイトレスたちのユニフォームや着物とは対象的に、このひとは黒の
タートルネックのセーターに、丈の長い同じ黒のスカートを着ていた。
年の頃なら、30前後。ショートカットがよく似合っていた。
「お、こっちが今日から新しく入った竹中くん」
「はじめまして。アズミです」
「あ、はじめまして。竹中っていいます」
「タケナカさんね。竹中直人に似てるって言われない? 名前じゃなくて」
「そうですね。ときどき」
「でしょー。似てるもん」
「あ、そうですか」
ふたりの会話に割って入るようにしてメグロ氏が言った。
「ちょっと、アズミ、カトウさんにも紹介しててくんないか。オレ、忙しく
てよお」
「メグロさん、しゃべるのイヤなんじゃない。カトウさんと」
「何言ってんだよ。んじゃ、よろしくな」
そう言って、メグロ氏は店の奥へと歩いていった。
「じゃあ、メートルディーのカトウさんを紹介するわ。まだ会ってないわけ
でしょ」
バーのほうに歩き出しながら彼女が言った。
「そのメーなんとかって何なんですか」
「あ、知らない? レストランで働いたことないの?」
「これが初めてなんです」
「初体験ってわけね」
「そうなんです」
「じゃあ、やさしくしてあげるわ」
「え? あ、よろしくお願いします」
彼女がクスリと笑った。
私は”カトウさん”なんか、どうでもよくなっていた。
ひろ
11月12日号 NO.197
『たわごとコラム』
先日の午後1時過ぎ頃、私は、私の人生に大きく影響するある真理を発見し
てしまったのである。
それをひとことでいうと、次のようになる。
「弁当は横にして食うと食いやすい」
私は現在、マンハッタンのミッドタウンにある日系企業で働いている。
そう説明すると、日本に住む人のほとんどは、「へ〜、じゃあ昼メシとかは
ピザとはハンバーガーを食ってるわけね」と思うに違いない。
でも、少なくとも、私、そして私のオフィスで働く人たちの主な昼メシは、
日本食なのである。それも、純日本風のお弁当を週2、3回、多い時はほぼ
毎日食っている(毎日オフィスにお弁当屋さんが来るんです)。
このお弁当の作りを説明すると、カタチは典型的な長方形で、駅弁によくあ
るように、片側にご飯、もう片側におかず、という配置になっている。
さて、ここで読者の方々にお聞きしたいのだが、あなたがこのカタチのお弁
当を食べる時、自分の目の前にそのお弁当をどういう向きで置くだろうか。
横にしますか。それとも縦に。意外なところでナナメとか。
正直に言おう。私はこれまでこのカタチのお弁当を縦にして食って、32年
間も生きてきたのである。
はっはっは。
(開き直りの笑い)
そのココロはこうである。
まず、お弁当を縦に置く。手前がご飯、向こう側がおかずである。
向こうのおかずをハシでつかむ。そしてそれを自分の方向に運びながら、ご
飯の上で1クッションおく。ここでおかずについた汁、あるいはソースがご
飯にしみる。同時にそのしみついたご飯をおかずと一緒につかみ上げ口に運
ぶのである。
ところが、先日、私はなんの拍子か、その日のお弁当を横に置いてみたので
ある。そしたら、食べやすいこと、食べやすいこと。
自分から見て、ご飯が右側にくるようにお弁当を置き、上記の「縦置き」の
例と同じように左側のおかずを右に運び、ご飯とおかずを一緒に口に入れ
る、という方法で食べたのだ。
目が覚める思いだった。
それはつまり感動でしたね。
ただ、同僚たちに聞き込み調査したところ、確かに「横置き」がほとんどな
のだが、ご飯を右に置く流派と左に置く流派の2つが存在することが判明し
た。
うむ〜、深いな。
なにはともあれ、私にとっては、32年間暗闇を走り続けたあと、急に太陽
の光を浴びたような、そんな出来事だった。
ちなみに、その時のマンハッタンは、雨でしたね。
ひろ
11月8日号 NO.196
『ニューヨーカーへの道』〜NY情報収集法6〜
それでは、他の都市で発行されている日本語情報誌の「その他」欄には、ど
んな情報が載っているのでしょうか。
最初は、シアトルで発行されている無料誌「ソイソース」の10月25日号
を見てみることにしましょう。
例えば、こういうのがあります。
「週末に庭の手入れ、または力仕事を手伝ってくださる方がおられましたら
ご連絡ください。お礼に食事をご馳走します」
ほのぼのとした風土がにじみ出ておりますね。
お次ぎは、ロスの日本語無料誌「LIGHTHOUSE」。ここの場合、「その他」
という分類はなく、「情報交換広場・OPEN FOR PUBLIC」というタイトル
で、個人もしくは非営利団体からのお金が目的でない広告は無料で掲載して
るようなのであります。
これがなかなか読みごたえがあるのであります。
同9月15日号から各広告の見出しを抜粋しますと、
「新潟市出身の方を探しています」「50歳以上の女性の方、お友達になっ
て下さい」「僕はカッコイイ、25歳になるオランダ系アメリカ人です」
「43歳の日系3世です。友達を探しています」「ロースクールの学生の
方、情報求む」「いらないマクドナルドのきっずミールのおもちゃくださ
い」「町田住民あつまれ!」「在日コリアンの皆さん!一度集まりません
か?」
すごいですね。
でも、こうやっていろんな日本語情報雑誌のクラシファイド欄を見てて思う
のですが、最近、あの「出張マッサージ」とかいうちょっとヒワイ系の広告
がすっかりなくなっちゃいましたねえ。
「スウェーデン式マッサージ、金髪女性がお相手します。詳しくはスーザン
まで」
なんちゅう広告を以前は見かけたのですが、今ではほとんどないのでありま
す。
これも日本の不況でスーザンちゃんのところに通うお金持ちの日本人が減っ
たからでしょうか。
スーザンちゅんは今頃何してるのでしょうか。
時代の流れを感じますね。
徹
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