◆97年12月第2週のぶりてんコラム◆




12月13日号 NO.59
『NYウエイター物語』〜金がないぞ1〜
時は、93年の春。
その頃、私は本格的に金に困り始めていた。
暮らすにも大学に行くにも金がなさ過ぎた。幸い家賃が安く、ついでにルー ムメイトが母国(タイランド)からの居候をガンガン収容したため、一時は 家賃が180ドルという状態も経験したが、それにしても金がなかったので ある。
日本から持ってきた金も底をつき、日本の両親に頼んで、いい年こいて仕送 りなど頼んでいた。
「いかん。これはいかん。」
とは思いながらも、仕事はなかなか見つからなかった。
その年の2月から私は大学に通い始めていた。市立の大学だったため、授業 料はそんなには高くなかった。半期で約2500ドルぐらいだったろうか。
でも、その金額でも、私にとってはやはり痛かった。
学生ビザで働くのは、基本的に違法、つまりイリーガルである。申請すれば 週20時間は働ける許可書がもらえるらしかったが、そんなもの取る人間は 私の周りにはいなかった。
私自身も、その労働許可書ナシで、それまでにいろんなバイトを経験してい た。
日系のオフィスを回るお弁当屋さん、日系新聞社のお手伝い、ベビーシッ ターなどなど。
すべてバリバリのイリーガル・バイトであった。
しかし、大学に通うようになって、昼間のバイトにはまったく手が出せなく なっていた。授業があったからである。
となると、残りは夜のお仕事だけである。でも、客商売だけはやりたくな かった。
「ふむ〜」
毎回、OCSニュースが出る度に、私はその求人欄を見ながら、ひとりうなっ ていた。
                       ひろ



12月11日号 NO.58
『NYJJ=ニューヨーク在住日本国籍日本人』
クイーンズに「ニュー・チャイナタウン」と呼ばれるフラッシングという地 区がある。その名の通り、この辺りには中国人及び韓国人が多く住んでい る。
朝、このフラッシングにある公園に行くと、中国人や韓国人が寄ってたかっ て太極拳だとか健康体操などをやっている風景を目にする。
私が見た時は、一集団50人ぐらいはいた。
彼らは毎朝そんなふうに集まって、「はあー」とかやっているのである。
そして、それが彼らのコミュニティーとしての強さの秘密でもあるのだ。
人が集まると様々な情報が回り始める。健康のこと、お金のこと、仕事のこ と、その他困ってること、などなど。
また同時に、そういう集団での行動は、一種の連帯意識を生みだす。
そういう要素を含みつつ、彼らは健康のために「はあー」するのである。
一方の日本人には、そういう「集団健康第一行動」というのは、見受けられ ない。子供の頃は「ラジオ体操」なるものに従事されられたが、それを好き 好んでニューヨークの公園でかますような日本人は皆無に近いだろう。
日本人コミュニティーに根性がないのは、こういうところにも原因があるの だ。日本人は、コミュニティー的基礎体力というのが、なかなかつかないよ うにできているのだね。
「ラジオ体操」普及運動でも始めようか・・・。
                          風



12月10日号 NO.57
『ニューヨーカーへの道』〜空港にて1〜
今の時代、船でアメリカにやってくる日本人の方というのは、ほとんどおり ません。
たまに、根性のあるチャイニーズの皆さんが、「ゴールデン・ベンチャー 号」などというボロ貨物”密航”船で、ニューヨークの海岸に体当たりして くること等がありますが、基本的にアジアからは空路にてのアメリカ入国と なる場合が多いようです。
従って、最初のアメリカとの遭遇は、「空港にて」ということになります。
ニューヨークには、JFK空港及びラガーディア空港の2つの空港があります。 JFKは大統領の名前、ラガーディアはニューヨーク市長の名前から取られまし た。
もし日本でこんなことをしたら大変なことになりますね。
「中曽根康弘」空港。
自衛隊の基地としては、なかなかいいネーミングです。
「青島幸男」空港。
最初はなかなかでも、後で墜落事故ばかり起きそうな名前です。
一般には、JFK=国際線、ラガーディア=国内線という見方をされてますが、 アメリカ国内の経由便を使って国際線に乗り換える比較的貧乏人の方々に とっては、ラガーディアの方がラブリーに感じられるはずです。
マンハッタンからでしたら、JFKの方が明らかに遠いです。タクシーでしたら 10ドルほどの差が出るでしょう。
しかしながら、その気になれば、両空港から1.5ドルでマンハッタンまでたど り着くことも可能です。地下鉄を使うのですね。
ただ、ニューヨークが初めての方が、この方法を実行なさる際に必要なものがあ ります。
「度胸」 「ある程度の英語力」 「鋭い方向感覚」 「何か起きた時のためにダッシュできるスニーカー」 「海外旅行保険」
これらのものが揃ってましたら、大丈夫ではないかと思われます。
あ、そうそう、もうひとつ、
「1.5ドルでマンハッタンにたどり着くために、自分の旅行と荷物と命を賭け られるギャンブル精神」
というのが必要かもしれません。
ま、人生なんてギャンブルみたいなものですからね。
次回も「空港」の話を続けます。
                        徹



12月8日号 NO.55
『NYC Traffic Jam』
マンハッタンはハドソン川の中にある島だからしてフェリーという 物が結構活躍しています。
その中の一つが、自由の女神まで多くの観光客をせっせと運ぶ フェリーです。
それは毎日、「せっかくニューヨークに来たんじゃけー、自由の女 神も見とかんとね」という人々を彼女のもとまで届け、「何じゃ、 自由の女神言うても結構ちっちゃいのう」と落胆した彼らを再びマ ンハッタンまで送り戻しています。
ある日、そのフェリーから人が落ちて、死にました。
なぜそれが起こったのか、という詳しい話は分かりませんが、こ の人はハドソン川の河口近くで、溺れ、茶色い水の中に消えてい ったそうです。
「フェリーから落ちて死んだ」ということは、毎日、何人かの人がい ろいろな原因で死んでいくここニューヨークでは大した事件にはな りません。ニュースで流れたのかどうかもわかりませんし、もしそ うだとしても、たいした扱いでなかったという事は簡単に想像でき ます。
しかし私がこの事に興味を持った理由は、落ちた人が茶色く濁っ た水の中に消えていったその時に、フェリーの中にいた日本人観 光客が取った行動です。
彼らは、その溺れている人の写真を撮っていました。
ここで、「だから日本人観光客は・・・」という言い方はしません。な ぜなら、ここに居合わせた人がたまたま彼らの行動を目撃してい たのであって、他の人々が同じ事をしていなかったとは言い切れ ないからです。
確かに、彼らの行動はここではふさわしいものとは言えません。 遺族の方がそこにおられたら、殴られてもしょうがない非常識な 行動です。
しかし、これは人間ならだれしもしてしまう事なのではないのでし ょうか。たとえ写真は取らなくても、多くの人がおぼれていく人を 見ていた事でしょう。そして、見えないところにいた人まで、わざ わざ見物に出てきたという事もあるでしょう。そこにいた多くの人 がその場面を見たいと思ったのではないでしょうか。私がそこに いたとしても、同じ事をしていたかもしれません。
彼らのその非常識な行動を正当化するつもりはまったくありませ んが、彼らはその誰もが持っていた衝動を、写真を撮るという事で 表現しただけなのかもしれないのです。
もし、あなたがそのフェリーの中に居合わせたら、あなたは写真を 撮っていましたか、それとも水の中に飛び込んでいましたか・・・?
MediaBlitz



12月7日号 NO.54
日本の出版業界は、今、大不況らしい。本が売れないのである。
そう言われてみると、なんとなく分かる気がする。ニューヨークに関する本 だけを見ても、魅力のあるものが少ない。すでに読者の方がニューヨークに ついてよ〜く知ってて、本の作り手側が、そのニーズに応えられてないので ある。
つまり、情報の面で読者に追い付けないわけね。
で、私は思うのである。作り手側はそのことに気がついているのかい、と。 そして、同時に彼らは、読者のニーズに応えられるように自分らを鍛えてい るのかい、と。
今の出版界には、売れた本の2番煎じばかりを狙う傾向がある。新しい分野 に突っ込んでいく勇気をすでになくしてしまったようだ。
また、最近では、そこそこ有名な作家たちでさえ、在東京の出版社に本の出 版を断わられ、地方の出版社に「私の本を出してください」とお願いしてる らしい。
今、日本の出版界は病んでいる。これは日本の活字界の危機でもある。
本の作り手の皆さん、ちょっと会社を離れてどこかをゆっくりと旅されたら いかがなもんですかね。自分たちを客観的に見れる場所に立って、少しモノ 考えたほうがいいと思いますよ。
あなたたちのためにも、そして私たち読者のためにもね。
                        風




「ぶりてんNuts」編集部


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