◆97年11月第3週のぶりてんコラム◆




11月22日号 NO.39
「鳥の軟骨の問題」である。
私は、フライドチキン等を食べる時、骨の先っぽについた軟骨まで食べてし まう。これは昔からそうで、よく親に、
「あんたが食うたあとは、犬も食わんばい」(熊本弁)
と言われたものだ。
一方のかみさんは、軟骨どころか、肉まで残してしまうような「もったいな い」食法を身に付けている。
であるからして、ふたりで骨付き鳥を食べる時は、かみさんの食ったあとを 私がもう一度掃除することになる。
コンビネーションとすれば、なかなかのものである。
ただ、問題は、私たちの子供がどちらの道を行くか、ということにある。
私は、自分の子供には、鳥の軟骨を食べるような人間になってほしいと思 う。
殺したからには、きっちり食ってあげるのが、「殺す側の生き物」としての 義務である。そのことを彼らにも理解してほしい。
でも、普通、母親の食の好みの方が、子供に乗り移りやすい。となると、彼 らが軟骨を食わない人間になってしまう可能性もかなりあるわけだ。
・・・・マ、マ、マ、マズイ。
こうなったら、私が家庭に入って、食事を作り、子供たちに「鳥の軟骨食 い」を教え込まなければなるまい。
「ほら、軟骨までちゃんと食べるのよ」
「チッ、そんなもん食わせてどうするんだ」
「あなたは黙ってて。お母さんは軟骨が嫌いなんだって。でも、食べよう ね」
「フン」
将来、そんな会話が繰り広げられそうな気がする。
「たかが鳥の軟骨ぐらいで・・・」という考え方もあるが、私にとっては、 自分の子供の将来を決める大切な「鳥の軟骨」なのである。
                      ひろ


11月21日号 NO.38
もし、先日、アイオワで生まれた7つ子の中のひとり、あるいは複数が死ん だ場合、その両親を「殺人罪」で訴えることは可能だろうか。
皆さんもご存知のように、この7つ子は、あくまでも「人工的」な7つ子で ある。薬によって7人の赤ちゃんを作り出したわけだ。
出産前からそのリスク、つまり、7つ子が最終的には6つ子、あるいは5つ子 になる可能性があることは、両親も知っていた。しかし、彼らは、赤ちゃん たちの命をかけて、7つ子の出産にチャレンジしたのである。
一体、何がうれしくて7つ子なのだろうか。
また、それは、ハーレムあたりにいそうな、女ひとりで7人の年子たちを 育てる黒人ママとは、同じ「7人の子供」でも、かなり違うものなのだろ うか。
「7人だから、ひとりかふたり死んでも、まだ5、6人はいるわけだろ。 ラッキー、ラッキー」
両親、あるいは、まわりをかこむメディアから、そんな思いが伝わってき そうでコワイ。
普段は、「赤ちゃんがホームレスに襲われた」だの「赤ちゃんが盗まれた」 などと大騒ぎしてるメディアが、この7つ子のイベントに関しては、「おめ でとう」調で報道しているのが、私にはイマイチ理解できない。
今回の「7つ子出産」は、世界でもっとも残酷なイベントのひとつである。 なんせ、赤ちゃんの命をかけとるからね。
そのことに、メディアは気づいてないようだ。
もし、7つ子のうちのひとりでも死んだら、その両親に対して、誰か訴訟を 起こしてほしい。
きっとおもしろい議論に発展すると思うよ。
                        風




11月20日号 NO.37
イーストビレッジの7th Streetとファースト・アベニュー界隈では、今、ウ クラニアン・レストラン「Teresa's」の変わり様が話題となっている。
以前から、味には定評のあった「Teresa's」だが、内装その他の目に見える 部分には無残なものがあった。「小汚ない」という言葉がよく似合うレスト ランだった。
この辺りは、ウクライナからの移民が多く、ウクラニアン・コミュニティー を作り出している。
「Teresa's」でも、年老いたウクラニアンたちが、背中をまるめ、手に持っ たフォークとナイフを震わせながら、ウクライナ風ロールキャベツなどと格 闘している風景をよく目にした。
ところが、である。「Teresa's」が改装したのである。
それはそれは、ものすごい変わり様であった。
小汚ない下町の大衆食堂が、いきなりビレッジ風の洒落たレストランに変身 したのである。
壁の色は、ちょっとおさえ目のベージュ色を使い、そこにまたビレッジ系の 絵をかけたりして。
こうなると、当然、お客側に混乱が起きる。
これまで見られた「背中をまるめた老人たち」の姿は消え失せ、比較的背中 のシャンとした若い衆たちが増えたようだった。
昨日も、私がそこの窓際の席で昼飯を食っていると、通りすがりのお年寄り たちが、店の中をコワゴワのぞき込み、まるで「こんなにきれいになったん だから、きっと値段も上がったに違いない。どれどれ・・・」という感じ で、窓にはり出されたメニューをじっと見つめていた。
そして、彼らは店には入らずに、そのまま南北に歩いていった。
私の横のテーブルでは、若いアメリカ人男性ふたりが、昼間っから背の高い グラスでバドワイザーを飲んでいた。
みんなどこに行ってしまったのだろう。
私は、道の反対側にあるマクドナルドを見つめながら、「あそこかもしれな いな」と、ふと思ったりした。
それは、7th Streetとファースト・アベニュー界隈では、小さくて大きな出 来事だった。
                        ひろ




11月19日号 NO.36
最近、ニューヨークで、中国人と日本人の間で静かな戦争が繰り広げられて いる。
53丁目の5番と6番の間の市立図書館の3階に「ワールド・ランゲージ・ コレクション」という世界中の本を集めたセクションがある。そこが戦場 だ。
そこでは、同じアジア系ということもあって、日本語の本と中国語の本は、 隣り合わせに並んでいる。
ところが、最近、日本語の本を借りる人の数が急激に増えたために、図書館 側が、日本語のセクションを中国語側に少し広げたのである。
つまり、日本が中国側に侵略したのである。
昔、似たようなことがあったせいかかどうかは分からないが、中国側は、 その動きに関して敏感に反応した。
「日本語の本が広がりすぎではないか」
そういうクレームが図書館側に寄せられたらしい。
ただ、今回の侵略は、客観的数値に基づく「領土拡大」のため、そのクレー ムは却下された。
そして、現在に至っている。
今後の展開としては、中国側が急激に巻き返してくることが考えられる。な んせ、人間の数で勝ってるもんだから、その気になれば、いつでも人員を投 入できるはずだ。
それに対して日本側は、「ひとりがいっぱい借りる」作戦を実行に移さねば なるまい。質で勝負するのだ。
中国の人たちには、過去の戦争において非常に申し訳ないことをしたと、私 は個人的に思っている。
戦争は、基本的にいけないものである。でも、この戦争のいいところは、 その戦火が激しくなればなるほど、人々は本を読む、ってことなのだ。
この戦争は勝たせてもらうことにしよう。
                       ひろ




11月18日号 NO.35
カトリーヌが彼と寝たのは、お酒のせいでした。「One Night Stand」と いったところでしょうか。
別に好きだったわけじゃありません。友達の結婚式で久々に会って、知らな い間にベッドにふたりで寝てました。
そんな軽い関係のはずだったのに、神様は気をきかせてくれました。
赤ちゃんができてしまったのです。
でも、カトリーヌには、おろすことはできませんでした。彼女は、ひとりで 生む決心をしました。
生んだ後は、どこかのいい家庭にアダプトしてもらうつもりでした。そのた めに、彼女はいろんなところをあたりました。そして最終的に、あるアイ リッシュ夫婦を見つけました。
数ヵ月後、元気な男の子が生まれました。彼女そっくりの真っ白な肌をした 赤ちゃんでした。でも、その子はすぐにもらわれていきました。
その晩、彼女は泣きました。
それから2年・・・・・
カトリーヌは来年の8月に結婚します。相手は、その男の子を生んだ後に知 り合った男性です。当然、彼は、その赤ちゃんのことも知っています。
今週の日曜日、久々に会った私に、彼女は、2歳になったその子の写真を見 せてくれました。
「向こうの家族が、時々送ってきてくれるの」
「どら、僕にも見せて」
隣に座った未来のダンナさんが言いました。
その写真には、かぼちゃに腰掛けた男の子が写ってました。ふたりはうれし そうにその写真をながめてました。
私は、いろんな意味において、日本がアメリカに負けるとは思いません。で も、こういう風景を目の当たりにしますと、その懐の深さ、つまり、この国 が持つ、さまざまな問題をつつみ込もうとする力には驚かされます。
「すごいなあ」
ふたりを見つめながら、私はそんなことを考えてました。
                        徹




11月17日号 NO. 34
『NYC Traffic Jam』
ワシントンスクエアパークといえば、昔はドラッグで有名だった。数は減った が、今でも行けば必ず何人かのディーラーは「葉っぱ、葉っぱ」と日本語で話 しかけてくる。
42丁目の図書館の裏にある公園も昔は結構盛んだったが、ワシントンスクエ アパークと同様今は警官がいつも見まわり、ディーラーはここでも商売上がっ たりのようだ。
ではこれらの場所を追い出された彼らはどこに行ったのか、その疑問に答えて くれたのはイエローキャブの運ちゃんだった。
「・・・ワシントンスクエアパークとかは有名になりすぎて警察官の数も増 え、商売できなくなったんだろうな。最近はディーラーがタクシーに乗って くるんだよ、客といっしょにな」
ナイトシフトのタクシードライヴァーは最近よくこういった類の客を乗せると いう。公園やストリートで商売ができなくなったので今度は車の中で、という 事らしい。
「走ってるタクシーってのは一種の密室だからな。自分の車の中でやってるわ けじゃないんで足がつく事もない。客を連れて乗り込んできて、タクシーが街 の中を走り回っている間に後ろの座席で売るんだよ。終わると別々に降りると きもあれば、いっしょに降りるときもあるが、ディーラーはチップだけは忘れ ず多くくれるな。」
ディーラーも自分らが見つけた取り引き場所を何とか確保しようと運転手に対 するお礼だけは忘れないみたいである。
最後にNYでこれは愚問だと思ったが、一応運ちゃんに「ドラッグの売買が自分 のタクシーの中であっても何もしないのか」という質問をしてみた。
「ディーラーはチップはずんでくれるからね。俺にしてみりゃディーラーが捕 まろうが、客がオーヴァードスで死のうが関係ねーよ。金さえ貰えりゃそれで 満足さ」
金さえもらえれば何の文句もないし、下手なことに首を突っ込んで余計な問題 を起こしたくない。思った通りのニューヨーカーらしい答えが返ってきた。
警察はドラッグの取り締まりに躍起になっているようだが、ドラッグがこれだ け一般化してしまうと需要が多い分ディーラーもあの手この手でなんとか商売 ができる方法を見つけ出すようである。
よく警官がドラッグのおとり捜査をするという話を聞くが、どうだろう、今度 はNYPDの車を青と白から、黄色一色に塗り替えてみては。間抜けなディー ラー一人くらいは捕まるかもしれない。
     MediaBlitz




11月16日号 NO.33
先日、アッパーイーストの病院に出産を終えたばかりの友人をお見舞いに行 きました。
生まれたばかりのアメリカ産の赤ちゃんを見るのは、これが初めてでした。
私が病室に入った時、その友人は乳をあげてました。
少しドキリとしました。
彼女はさっとその乳を片づけ、私と話し始めました。そして、その赤ちゃん を私に抱かせてくれました。
生まれたばかりの赤ちゃんというのは、ホントに小さいんですね。それに軟 体動物のようにフニャフニャしてました。
そんなことを考えながら、ふと赤ちゃんの足を見ると、腕時計のようなもの が巻き付けてありました。
「これはきっと、生まれてから何時間たったかを教えてくれる時計に違いな い」と私は思い、その時間を確認しようとしたのですが、それはただの鉄の カタマリで、時間の表示などは見当たりませんでした。
そこで、わたくし、聞きました。
「ねえ、これって何よ」
「それ? ああ、それは赤ちゃんが盗まれないようにするための盗難防止機 よ」
「は?」
わたくし、驚きました。それは、こちらの本屋さんや洋服屋さんが盗難防止 のために使用する装置と同じものだったのです。それをつけたまま、入口の ドアを出ようとすると、「ピー、ピー、ピー、ピー」という音がなるので す。
「赤ちゃんがよく盗まれるのよ。特に、白人の赤ちゃんがね」
赤ちゃんを万引きされる方々というのは、やはりポケットなどに赤ちゃんを 忍ばせて、シラーっとした顔でドアを出ていくのでしょうか。
そして、「ピー、ピー、ピー、ピー」という音がなります。
警備員が言います。「はい、持ってる物をチェックさせていただきます。ま ず、ポケットを開けて」。
犯人がポケットを開けると、生まれたばかりの赤ちゃんがコロリンと転がり 落ちます。
「ほら、あった。ふーん、白人の赤ちゃんがお好みでしたか。じゃあ、 ちょっと裏に来てもらおうか」
そうやって、犯人は連れ去られ、赤ちゃんはもとのラックに戻されるのでし た。
世の中、来るところまで来たな、という感じがします。
                        徹






「ぶりてんNuts」編集部


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